一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会

The Association for the Research and Preservation of Japanese Helmets and Armor

平成30年10月本部月例研究会のご報告

和式乗馬の特異性と鐙装着の歴史的変遷
10月14日(日)の月例研究会は菅野茂雄氏(当会常務理事)講師でした。講師が準備されたA4版レジュメ2枚他パワーポイントを使用し、絵巻を中心に説明頂きました。初めに鐙のかけ方の違いについてのお話があり、刺金(さすが)の位置で内掛け外掛けが決まります。時代的には平安後期や鎌倉時代の絵巻の馬装は殆どが外掛けで、室町時代以降の舌長鐙は内掛けが殆どだそうです。因みに相馬野馬追、講師が所属されている倭式騎馬会の鐙の掛け方も内掛けだそうです。
次に和式乗馬の特異性についてのお話では、乗馬の方法には左乗馬と右乗馬があり、世界的には左乗馬、日本のみは右乗馬(明治時代以前)だったそうです。
日本の乗馬では、「大刀が当たるので左乗馬でなく右乗馬になった」が定説ですが、菅野氏は「馬上戦で使用するために古墳時代の刀剣より長い大刀が作られた」と考えているそうです。毛抜き型の太刀などは、馬上での引き抜き、差し(刀身を鞘に入れる)を容易にするための太刀ではないだろうか。左手を弓手、右手を馬手と言い、馬上での手の握り方を示す言葉あり手綱の握り方も独特で片手手綱を取りやすいそうです。左乗馬の場合、左手で手綱を握りますが、長物(弓薙刀)などを持つ場合は馬上で持ち変える必要があり、右側乗馬の時は右手で手綱を握り、左手で長物を持って乗馬できるので、間髪いれずに馬を走らせることが可能になるそうです。こうした理由で侍の乗馬は右側乗馬であったと菅野氏は考えています。
今回の例会では菅野氏に準備していただいた木馬に、参加会員の一人が甲冑を着用し太刀を佩き右乗馬と左乗馬を行ってみました。また弓を持ちながらの乗馬も行って菅野氏の言われることを実験してみました。菅野氏には甲冑一領、鐙6双(鎌倉時代~江戸時代)、鞍6背 (室町時代~江戸時代)を用意していただき貴重な物を見ることが出来、25名の参加者で盛況な研究会となりました。